建設業界と比べてみた

不動産業界に関する情報を集めていると、必然的にかかわりの多くなってくる業界として、建設業界があげられると思います。
不動産が扱うのは土地と建物ですが、その建物を実際に建てているのが建設会社です。
お互いに隣接した業界ですので、比較することで新しい知見を得られることもあるかもしれません。
今回は少し視点を変えて、この隣接する建設業界について触れていきつつ、不動産業界の特性についても考えていけたらと思います。

建設業界とは?

建設業界も不動産業界と同じように、2020年の東京オリンピックに向けた建設ラッシュにより活況を呈しています。
建設業界の市場規模は15兆円以上と大きく、労働者数も非常に多く、平均勤続年数はほかの業界とくらべるとやや長いようです。
その理由として、職種的に専門性が高く、ベテランが長く活躍しやすいという傾向があります。
ですから平均年齢も43.9歳と高く、平均年収も600万円以上と高くなっており、営業活動を主体とする不動産業界とはかなり違うところであり、うらやましい限りです。

しかしながら、年齢も年収も高いことについては、単にベテランが多いことだけが原因ではないようです。
その理由について建設業界の抱える問題と地続きとなっていますので、一緒に説明していきたいと思います。

建設業界の抱えている課題として最初に挙げられるのが、深刻な人手不足です。
先程、労働者数が多いと述べましたが、あくまで他の業界に比べると、という話であって足りてはいないのです。

東京オリンピックや、東日本大震災に代表される近年の様々な激甚災害からの復興事業の影響によって、建設業界の需要は増加しているにもかかわらず人手不足に見舞われています。

とくに工事現場で稼働する職人と、その職人をマネジメントする技術者の不足が深刻で、震災の復興事業も進捗は遅れているのが現状です。
人手不足によって職人の労務費は当然上がりますので、建設コストの増加につながってしまい、その結果開発計画が頓挫してまったという事例もみられます。

不動産業界と同様、東京オリンピックを前にしたこの好景気に沸いているにも関わらず、建設業界だけなぜそこまでの人手不足が起こっているのでしょうか。

理由の一つとして挙げられるのが、若い世代の建設業離れです。
少子化の影響もあり、建設業界に就職する若者の数は減少傾向にあり、2020年には15万人ほどの労働人口の不足に陥ると言われています。
まず若年層が業界に入ってこなくなって入職率が下がり、せっかく入った若手の職人も業界を離れるため在職率も下がる、という悪循環が続いているのが現状です。

こういったサイクルで高齢化が進む一方で、若手が増えていかないわけですが、建設業界に「きつい・汚い・危険」のいわゆる「3K」のイメージがついてしまい、にもかかわらず基本的な福利厚生が徹底されていないというのも大きな理由と思われます。

二つめの理由としては、「リーマンショック」の影響による職人離れで、これが決定的だったようです。
徐々に起こりつつあった建設業界の人手不足に、更なる拍車をかけたのがアメリカのサブプライムローン問題に端を発したリーマンショックでした。

リーマンショックの混乱は世界中に広がり、日本も例外ではなく国内の建設需要は激減してしまいました。
これは職人の仕事の激減を意味し、結果仕事の無くなった職人たちは、食べていくために他の産業へ転職していくか、仕方なく退職の道を選んでしまいました。
その後の景気回復とともに、建設需要も回復してきたのですが、職人の数は減り続けたままでした。
元請けの建設会社の多くは人手が足りなくなったら辞めた職人を連れてくればいいと考えていたのですが、一度業界を離れた職人は簡単に戻ってくることはなく、実際に断られるケースも多かったようです。
その結果、景気が回復したのち増加した需要に対し、それに見合う労働力を確保できない人手不足の状態が続くようになってしまったようです。

不動産業界と同じく、建設業界も人々を取り巻く街や環境をつくっているものといえます。
ですから不動産と同様に建設業界のマーケットに影響をあたえてしまう物もまた、世界規模の好不況や、国内の少子化問題や災害など、幅広いジャンルのものとなるようです。

現実に起こっているニュースに業界が左右されていくところは不動産業界も同様です。
しかし不動産業界が2020年以降を懸念されているのに対し、建設業界は好景気に沸く今まさに課題に直面しているといえます。
建設業界は需要の増した現在も、建設会社の企業数そのものは多過ぎて過剰供給の状態でもあるため、各社の熾烈な価格競争により、その利益率は低いというおかしな矛盾もはらんでいます。
そして材料費の高騰と前述のような人件費の高さも利益率を低くたらしめている要因とされています。

こういった状況を打開するために、一部の企業では職人の待遇改善を始めているところもあるようです。
各社において、賃金面では「優良技能者手当て」など技術や経験、指揮能力などが買い叩かれることのないように、手厚く評価する方向に進むことでモチベーションを高め、人材の流出を防ぐねらいのようです。
社会保険を完備することにも注力し始めています。
とくに「社会保険未加入のところは国土交通省直轄の工事を受注できない」という決まりにするなど、システムから変えていこうという兆しが見え始めています。

また職人の長時間労働を防ぐために、工数を削減する工夫に取り組んでいたり、その省工数化の方法を共有化してみんなで使えるようにしたりと、業界全体で問題解決に取り組んでいるようです。

不動産と建設の両業界の最大の違いとして、不動産業界は他の業界から転職しても営業や接客の経験などボーダレスに通用する能力があるのに対して、建設業界で使える力というのは建設業界で育てていくしかないという点にあると思います。

その点に気付き始めた建設業界はようやく待遇の改善を始め、若い世代の獲得に力を入れ始めたようです。
今後迎える問題としては、不動産業界と同じく2020年の東京オリンピック以降の需要がどうなるかというところです。
リーマンショックのときと同じ轍は二度と踏まないように願うばかりですが、建設の仕事がどうなるかはその時を迎えてみないと分かりません。
中規模の企業が合併するとの意見もあったり、建設会社が合併して相乗効果を出すのは難しいので意味が無いなど様々な意見があるようです。
しかし間違いなくその影響は隣接する不動産業界にも伝わってきますから、その動向を注視しておくことは重要かと思います。